生理痛の原因と対処法
「生理痛がひどくて、夜もなかなか寝られない」「生理痛がひどく、毎月の生理が憂うつ」
毎月訪れる生理。出血があるだけでも大変なのに、つらい生理痛に悩まされている方は少なくありません。生理痛を経験したことがある女性は全体の約8割に及ぶとされており、ほとんどの女性が生理痛に苦しんだことがあると推測されます。
そこでここでは、生理痛が起こる原因から症状、ひどい痛みやその他の症状を和らげる対処法についてご説明します。
婦人科特定疾患管理料について
2020年より、器質性月経困難症が「婦人科特定疾患」に指定されました。それに伴って「婦人科特定疾患治療管理料」が制定され、器質性月経困難症の患者様でホルモン剤を投与している場合、3ヶ月に1回管理料の算定を行うこととなりました。
監修医師
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「なぜ痛みが起こるの?」
生理痛の原因とは
多くの女性を苦しめる生理痛。日常生活に支障をきたすほどの生理痛を"月経困難症"といい、その月経困難症はタイプによって大きく2つに分類されます。2つの月経困難症について、一つずつ見ていきましょう。
機能性月経困難症
(きのうせいげっけいこんなんしょう)
機能性月経困難症は、身体に問題となる原因疾患がなくて症状が現れます。強い子宮の収縮が原因とされており、初潮(初経)を迎えた2~3年後から起こることも特徴です。発症は思春期の女性に多く、月経困難症の大部分がこのタイプに分類されます。
生理時の出血(経血)を子宮外に排出するために、子宮を収縮させる物質のプロスタグランジンが分泌されるのですが、このプロスタグランジンが多すぎるため子宮が収縮しすぎてしまうのです。また、子宮頸管が狭いことも痛みの原因となっています。
器質性月経困難症
(きしつせいげっけいこんなんしょう)
もう一方の器質性月経困難症は、身体に何らかの原因疾患があって症状が現れます。原因は子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)などの疾患があり、生理中以外にも症状が起こるケースがあります。原因疾患を治療すると症状は改善していくことも特徴といえるでしょう。
生理時に起こるつらい症状
日常生活に支障をきたすほどではなくても、生理痛はさまざまなつらい症状で女性を苦しめます。なぜ、このような症状が起こるのでしょうか?ここからは、生理痛の代表的な症状の原因についてご説明します。
腹痛
子宮の中では生理が始まる少し前から、子宮を収縮させる働きを持つホルモンであるプロスタグランジンが分泌されます。プロスタグランジンは経血を子宮外に排出させるためになくてはならない物質ですが、同時に「痛み・熱・腫れ」を引き起こす成分としても知られています。このプロスタグランジンの作用によって子宮やその周囲の血管が収縮してしまい、腹痛となって症状が現れるのです。
腰痛
生理痛の一つである腰痛も腹痛と同様に、プロスタグランジンの分泌が多すぎることで起こります。プロスタグランジンの働きで子宮や子宮周囲の血流が悪くなってしまい、骨盤の周りを中心にだるさや痛みが起こるからです。
頭痛
生理中の頭痛は、女性ホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が関与しています。エストロゲンは生理前にその分泌量が減少し、それに伴い血管の収縮を促す作用がある脳内物質のセロトニンも減少してしまいます。セロトニンの減少によって、脳内の血管が拡張してしまい頭痛が起こるのです。この頭痛の特徴は、通常見られる偏頭痛よりも症状が長時間に及び、痛みもより強くなる傾向にあります。
吐き気
吐き気も、プロスタグランジンの分泌量が多すぎることで起こる症状として挙げられます。プロスタグランジンが子宮を収縮させる作用があることはご説明しましたが、プロスタグランジンは子宮だけでなく胃や腸も収縮させてしまうのです。胃や腸が収縮すると胃に不快感が起こり、それが吐き気となって感じられます。
貧血
生理中にめまいや立ちくらみがするなどの症状を感じることがありますが、これはほとんどが脳貧血の症状とされており、血液中のヘモグロビン値が低下する貧血とはまた違うものです。脳貧血は起立性障害、自律神経失調症の一つと考えられています。生理中はホルモンバランスが乱れがちになり、それに伴い自律神経が乱れることで脳貧血が起こるのです。血液が薄くなる貧血とは違うとご説明しましたが、経血量が多すぎる方は鉄欠乏性貧血になっている可能性もあるため注意が必要です。
イライラ
生理前や生理中に起こるイライラや不安感などの精神系症状の原因は、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の減少です。エストロゲンには心も身体もリラックスさせる働きがあります。しかし、生理期間中はこのエストロゲンの分泌量が減少してしまうのです。その結果、些細なことでイライラしたり、心の安定性にかける症状が現れたりします。
生理痛を和らげる緩和策6選
つらい生理痛を和らげるために、ご自身でどのようなことができるでしょうか?自分で行える簡単な方法を6つ挙げてご紹介します。ぜひ試してみてください。
1.温める
生理痛にとって一番の敵は、"冷え"です。身体の冷えは、生理痛を悪化させる原因となります。生理痛による下腹部や腰の痛みには、お腹と骨盤周辺を温めると効果的です。カイロや毛布・ひざ掛け・腹巻きなどで温めることから始めてみてはいかがでしょうか?ただし低温やけどには注意してください。
また、日頃からシャワー浴で済ますのではなく、入浴や足浴を生活習慣に取り入れてみましょう。生理痛の緩和には普段から身体を冷やさないことが大切です。強い冷房、冷たい食事、冷たい飲み物、下半身を冷やすような薄着も避けた方が良いとされています。身体の冷えは血流を低下させ、痛みがひどくなると覚えておいてくださいね。
2.痛みを和らげる姿勢
痛みがあるとどうしてもその部位をかばい、身体が緊張してしまいます。お腹が痛いときは背中を丸くしてしまう方も多いのではないでしょうか?しかし、身体の緊張や縮こまった体勢は、血行を悪くさせてしまう一方です。どんな姿勢がいいかというと、座位の場合は骨盤を立てて座る姿勢が血行を邪魔しません。脚を開いて骨盤を立てるようなイメージで座ってみてください。
寝るときの寝姿勢は、側臥位がいいでしょう。側臥位は横向きに寝ることを指します。右・左どちら向きでも良いのですが、膝を軽く曲げて身体を少し丸めるのがポイント。お腹の緊張が和らぎ楽になるはずです。クッション等で重心を分散させると、身体の特定の部位に重心がかからなくなるので、より楽になります。
3.食べ物や飲み物の工夫
生理中に避けたい食べ物があるのはご存じですか?まず避けたいのは、身体を冷やしてしまう飲食物です。冷たい飲食物の他にも、砂糖をふんだんに使用したケーキ・クッキー・アイスクリーム等も身体を冷やす原因になります。また、血管収縮作用があるカフェインも血流の低下を招くことから、避けたい成分の一つ。そのため、コーヒーや紅茶などの摂取も控えておくといいでしょう。
では、取り入たほうがいい飲食物は?というと、EPAを多く含んだ青魚が代表格です。EPAには子宮の過剰な収縮を抑えて、痛みを緩和させる効果があります。サバ・マグロなどを積極的に食べると良いでしょう。さらに挙げるとすれば、ナッツ類もおすすめ食材です。ナッツ類に多く含まれるマグネシウムが、気分の落ち込みや疲れやすさ、だるさなどを緩和してくれます。特にマグネシウムが豊富に含まれるアーモンドなど、ナッツ類をおやつ代わりにしてみるといいでしょう。
4.適度な運動を取り入れる
生理中につらい症状がある場合には、運動したくないと思う方が多いのではないでしょうか?しかし、運動不足や身体の冷えが原因となって血行が悪くなり、子宮の筋肉が硬くなってしまうとさらに生理痛が悪化してしまうのです。子宮は不要になった子宮内膜と経血を子宮の外に排出しようと収縮を繰り返すのですが、血行が悪くなり子宮が硬くなると、さらに子宮収縮が促されてしまいます。この促される子宮収縮によって、生理痛がもっとひどくなるという具合です。
運動すると全身の血流が促され血行が良くなります。つらいかもしれませんが、生理中の適度な運動は生理痛の緩和につながるのです。生理中の運動は、ストレッチ・軽いウォーキング・頑張りすぎないヨガなどがおすすめ。こうした適度な運動は、ストレスの発散やリラックス効果も期待できるので、ぜひ取り入れてみてください。
5.ツボを刺激する
生理のつらい不調を和らげるには、ツボ押しやツボ温熱療法がおすすめです。ツボ温熱療法は、ツボを温めてツボ周辺の血行を良くします。この方法はホットパックを用いて、ツボを3~5分ほど温めるだけの手軽なものです。ツボを押す場合も温める場合も、気持ちいい・心地よいと感じる程度の強さ、温かさで行いましょう。生理中だけでなく、生理予定日の1週間前あたりから始めるとより効果的です。
生理痛に効果的なツボを4つご紹介します。
気海(きかい)は、おへそから指で1~2本分下がったところにあるツボです。全身の血行を促進し、身体を温めるのに効果があります。
合谷(ごうこく)は、手の甲側の親指と人差し指の骨が交わるところよりも、若干人差し指に寄ったくぼみの位置にあるツボです。万能のツボと呼ばれ、自律神経の乱れを緩和する働きがあり、生理痛だけでなく首肩コリや風邪、精神安定にも効果を発揮します。
三陰交(さんいんこう)は、足首の内側にあるくるぶしの一番高くなっているところに指をあてて、指4本分上に上がったところあるツボです。ホルモンバランスを整え、婦人科系のトラブル全般に効くツボとされています。
照海(しょうかい)は、内側のくるぶしの骨の下から親指1本分下がったところにあるツボです。泌尿器系・婦人科系の疾患に用いられることが多く、下腹部を温めて血行を良くするとされています。
6.アロマテラピーでリラックス
アロマテラピーは芳香療法とも呼ばれ、アロマテラピーで使用される精油の種類によって、生理中のさまざまな症状を緩和させる効果が期待されます。身体を温める入浴にアロマテラピーを加えることで、さらにリラックス効果やイライラ感の緩和が見込めるだけでなく、バスソルトとして用いれば、塩の温熱効果によってポカポカと身体の芯から温まることも可能です。おすすめの精油には、ラベンダー・ゼラニウム・カモミールなどがあります。また、手軽にアロマを取り入れる方法として、ホットのハーブティもおすすめです。
- ラベンダー:頭痛、筋肉痛、神経痛などの痛みの緩和、精神を安定させる
- ゼラニウム:ホルモンバランスの乱れを改善、不安や緊張をほぐす
- カモミール:痛み全般の緩和、鎮静作用による心地よい眠りを促す
「病気かも…?」
病院に行く目安とは?
生理痛はご自身で対策し、市販の鎮痛剤を飲んで済ませてしまうことが多いのではないでしょうか?しかし、病院やクリニックなどの医療機関を受診したほうがいいケースもあります。下記のような場合は、医療機関を受診してください。心斎橋駅前婦人科クリニックでは、生理痛によるトラブルにも対応しております。つらい症状・気になることがある患者さんは、お気軽に当クリニックにご相談ください。
生理に伴うつらい症状 |
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生理痛がひどいときは、子宮内膜症、子宮筋腫、骨盤内の感染などの疾患がある可能性も否定できません。中には不妊症につながる疾患もあるため、早めの受診をご検討ください。
生理痛の治療方法が知りたい
日常生活に支障があるほどの生理痛=月経困難症には、やはり治療が必要です。では、生理痛にはどのような治療法があるのでしょうか?
生理痛に効く薬=鎮痛剤
「機能性月経困難症」の治療の第一選択肢として、鎮痛剤の内服が挙げられます。プロスタグランジンの合成を抑える作用のある非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の使用が一般的です。非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)には、ロキソニン錠・ボルタレン錠・バファリン錠などがあります。
鎮痛剤の飲み方にはコツがあります。どういうことかというと、「我慢できない!」というほどつらい痛みが現れる前や、痛くなりそうなときは早めに内服することです。鎮痛剤は痛くなってから飲むより、痛くなる前に飲む方が効果的なので、場合によっては、1日3回や1日2回など定期的に内服することをすすめられることがあります。
低用量ピル(低用量経口避妊薬/OC)
低用量経口避妊薬=ピルというと、避妊効果にばかり目を向けてしまいがちですが、実は生理痛を軽減することもできます。低用量ピルは子宮内膜の増殖を抑制するため、プロスタグランジンの産生・分泌が抑えられるのです。痛みの元となるプロスタグランジンの分泌が抑えられ、さらに子宮収縮作用も抑制されることから生理痛の緩和・改善に効果が期待できます。低用量ピルは、月経前症候群(PMS)や生理不順などにも効果が見込めることから、女性の強い味方となり、生活の質(QOL)を向上させる薬剤といえるでしょう。
漢方薬
漢方薬は中国が起源ですが、日本において独自に発展した「漢方医学」で使われる薬のことです。患者さんの体質や症状を考慮して処方されます。漢方薬は自然由来の"生薬"を使用するため、副作用が少ないこともメリットです。月経困難症には、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)などが主に使用されます。
生理痛は我慢しないで!
「毎月のことだから生理痛は仕方ない」「誰にも相談できないから我慢する」など、生理痛を我慢する方は非常に多くなっています。しかし、生理痛を我慢してもなにも良いことはありません。よく鎮痛剤はクセになるといわれることがありますが、決してそんなことはないのです。生理痛がひどい、つらいと感じた場合は、一度心斎橋駅前婦人科クリニックにお越しください。産婦人科専門医である医師と、看護師を始めとしたスタッフが一丸となり、患者さんのQOLの向上を目指します。お気軽にご相談ください。
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生理痛のよくあるご質問
- 生理痛は病気なのですか?
- A.いいえ。生理痛は厳密にいうと病気ではありません。しかし、月経困難症は病気です。また、生理痛には病気が隠されていることがあるので、注意しましょう。生理痛を引き起こす原因となる病気は、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などです。ひどい生理痛の症状がある場合や毎月生理痛に悩まされている方は、お気軽に心斎橋駅前婦人科クリニックにご相談ください。病気が隠れていないか検査をすることも可能ですし、もし病気が見つかった場合は、すぐに治療を開始しましょう。
- 生理痛がひどいと不妊になると聞きました。本当ですか?
- A.生理痛がひどいこと自体が不妊につながることはないでしょう。しかし、ひどい生理痛を起こす原因疾患がある場合は注意が必要です。ひどい生理痛を引き起こす原因疾患として、子宮内膜症や卵巣の疾患が挙げられます。これらを治療せず放置してしまうと、生理痛がひどくなるだけでなく、不妊症につながるのです。そのため、生理痛がひどいと感じたら、心斎橋駅前婦人科クリニックにご来院ください。産婦人科専門医である医師が生理痛や不妊症の原因となる疾患がないか、診察・検査いたします。
- 生理がこないのに腹痛があります。受診すべきですか?
- A.生理と生理の中間くらいの時期の腹痛の場合、排卵痛の可能性があります。排卵痛の場合は、受診は特に必要ありません。しかし、排卵痛と思われる痛みが続くとき、あまりにも痛みが強いときには他の原因が考えられるので、受診が必要です。子宮内膜症や卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)の場合には、激しい腹痛を伴うことが多くなっています。また、生理がこなくて腹痛があるケースでは、妊娠の可能性もあると考えられるでしょう。生理期間中ではないのに、腹痛がある場合は念のため、心斎橋駅前婦人科クリニックを受診してください。
- 素人が生理痛を緩和させる方法はありますか?
- A.はい。まず身体を温めることが一番です。また、適度な運動を取り入れ、カフェインやアルコールを控え、バランスの良いお食事を摂ることも大切なので、ぜひお試しください。さらに、この記事でご紹介したツボやアロマテラピーも積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか?もし、効果があまり見られずひどい生理痛が続くようであれば、心斎橋駅前婦人科クリニックまでお越しください。原因を突き止め、患者さんに合わせた治療法を開始させていただきます。生理痛は我慢しても良くなりません。ぜひ、お気軽にご相談ください。
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